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近江牛の特長
琵琶湖に代表される豊かな自然の中で育てられた近江牛は、元もとは農耕に使われていた但馬牛がルーツです。
清冽な水や栄養バランスに配慮された飼料で育まれたその肉質は霜降りの度合いが高く、特有の芳醇な香りと肉の柔らかさが魅力です。
しっかりとした肉質から枝肉の輸送中の目減り・水引が少なく、全体的に美しいサシが行き渡り、そのサシには独特のツヤと粘りがあるのが特長の、日本三大和牛のひとつです。
近江牛の歴史
近江牛の歴史は古く、天正18年(1590年)、豊臣秀吉が小田原を攻略した際、キリシタン大名として知られる高山右近が諸侯に牛肉を振る舞ったといわれています。
肉食文化が禁忌だった日本でも、薬としての肉食は認められていました。
元禄年間(1688~)には彦根藩では牛肉の味噌漬けを「反本丸(へんぽんがん)」として商品化。
天明年間(1781~)には乾燥牛肉の製法を考案して将軍、家斉に献上したそうです。
江戸末期になると、彦根産の牛肉は薬用と称されて、それを食する「牛鍋屋」が開業して繁盛していました。
近江牛の豆知識
近江牛発祥の地、彦根藩の名産品は牛の味噌漬けです。
味噌漬けは「反本丸(へんぽんがん)」という薬名で呼ばれていました。
安政7年(1860年)、井伊直弼が15代目彦根藩主になると、水戸の徳川斉昭と対立するようになり、次代に牛の味噌漬けの献上も滞るようになりました。
近江牛が大好きな徳川斉昭が再三、彦根藩にお願いをしても無下に断られたため、これに怒った水戸藩士が決起し、藩主の井伊直弼を倒すことになりました。
これが世にいう「桜田門外の変」です。食べ物の恨みは恐ろしいですね。
参考サイト:
「近江牛」生産・流通推進協議会)
http://www.oumiushi.com/index.php
参考図書:
「和牛道 極上を味わう!!」みかなぎ りか(株式会社扶桑社、2008年)
「牛肉論」田辺 晋太郎(ポプラ新書、2016年)